【モノのインターネット】IoTとは?導入事例とIoTが描く未来について
「IoT」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?「Internet of Things」という単語の頭文字を取った用語で、日本語では「モノのインターネット」と呼ばれています。
近年、幅広い業界で話題になっている「IoT」ですが、今回は「IoT」とは何か、導入事例やこれからの展望についてご紹介します。
IoTとは?
IoTとは、シンプルに言ってしまえば、いろいろな「モノ」をインターネットでつなげようという発想です。インターネット環境によって情報伝達の効率化が図れたり、センサーなどを利用してモノから取り出した情報を収集し、マーケティング分析の材料として蓄積したりできます。
IoTによって収集したビッグデータを有効活用することで、新たなビジネスチャンスにつなげようとする動きが加速しているのです。
対象となるモノは、自動車や家電、家屋や人体にまでおよび、スマートフォンなどを介して、身近な場所でも既に導入されているケースが多くある一方で、「IoTだ」と一般的に認知されている事例はあまり多くないと言えるでしょう。
IoTが注目されている理由とは?
インターネットを通じて多くの情報を収集・分析するという考え方自体は、決して新しいものではありません。最近になってIoTが注目されてきた背景には、情報の収集や分析をするための環境が時代と共に整ってきたことがあります。
センサーが高性能かつ安価になってきている
もともとインターネットと接点がない「モノ」のデータを収集する際に役立つ「センサー」に関する環境の変化は、IoTに大きな影響を与えていると言えます。
例えば、現在のセンサー技術で検知した周りの温度や人の動きは、冷暖房の温度設定や風向き調整の自動化などを実現していますが、これをIoTに応用することで、さらに便利な新機能を開発することが可能です。
しかし、センサーそのものが高価だと、原価の問題で採用が厳しくなります。仮に採用できたとしても販売価格が高額になってしまうため、世の中に広く普及させることは困難でしょう。
昨今、IoTが注目されている理由の1つとして、センサーの小型化とコストダウンが挙げられます。IoTを実現するためには、高性能なセンサーを始めとする機器や装置が必要ですが、技術の進歩によって安く作られるようになったため、IoTの導入が現実的になってきたのです。
クラウドやAIによって大量のデータを蓄積・分析できるようになった
情報処理の方法が進化してきたことも、IoTを実現しやすくなった要因と言えるでしょう。私たちの身の回りで扱われる情報量は時代と共に増え続けています。個々の端末上では保存しきれないほどになってきている情報量ですが、「クラウド」という仕組みが実用化されてからは、膨大な情報をサーバー上で効率良く一括管理できるようになりました。
現在は分散型のデータ処理によって、より膨大な情報量を扱うことができるようになったため、IoTによるビッグデータの管理も安全に行いやすくなってきています。
また、膨大なデータを収集できても、処理を行うためには多くの時間や労力が必要です。時間の短縮と労力の削減を両立させるべく、人工知能(AI)の研究が進んでいます。自ら判断し、場合によっては学習しながら作業を行うAIが実際の現場で活用され始めてきたことにより、データ分析のスピードが格段に速くなりました。
データを収集するための機器が安く手に入るようになり、それらの機器によって集められたデータを迅速かつ正確に処理する方法が一般化されたことで、IoTが現実的な選択肢として、企業のマーケティング戦略に組み込まれるようになり始めたのです。
IoTの代表的な事例
では、具体的にどういった場面で、私たちの生活とIoTが関わってくるのでしょうか。
例1:ICカード対応自販機でニーズを分析、売り上げ向上へ
ごく身近な例として、ICカードで購入できる自動販売機にIoTが利用されているのをご存じでしょうか。定期券などのICカードからは所有者の属性情報(年齢など)を取得できます。例えば、「この自販機は若い世代の利用者が多い」、「女性の利用率が高い」といった情報を得られるのです。
それらの情報を蓄積・分析することで、その自販機で販売すべき商品の検討が行えます。もし女性の利用率が高い自販機なのであれば女性向けの商品を目立たせたり、社会人が多いエリアではコーヒーの種類を豊富にそろえてみたり、さまざまな形で戦略を練ることができます。
例2:毎日の健康サポートや医療現場のヘルスケアに活用
血圧などの情報は医療やヘルスケアの分野でも有用です。血圧計や体温計からの情報をインターネットで送信し、その日の体調に合った食事内容や運動方法を通知してくれるサービスもあります。個人の詳細なデータを収集・分析するため、サービスの利用者は自分の主治医から意見をもらっているような充実感を覚えることでしょう。
高齢者人口の増加にともない、医療分野におけるIoT導入の需要はますます高まることが想定されます。若い世代の人口が少なくなってくることも考えると、インターネットを利用した医療サービスを充実させることは、人員不足を補う意味でも重要なポイントになるのではないでしょうか。
例3:人感センサーで介護スタッフの負担を軽減
高齢化社会が進むと認知症などによるトラブルのリスクも高まりますが、IoTの導入によって介護者や介護スタッフの負担を軽減し、トラブルのリスクを削減することが期待されています。
「ベッドからいなくなる」などの異常があれば、人感センサーによってすぐに通知されるため、転落や徘徊などによるトラブルを防げるほか、介護スタッフの精神的な負担も軽減することができます。IoTは今後の日本を支える技術でもあるのです。
IoTによる未来のかたち
さまざまなモノから情報を収集できるようになれば、今後の社会環境も劇的に変わっていくことが予想されます。IoTのさらなる普及に比例して分析対象となるデータは増大し、人工知能の学習精度が高まるにつれて処理スピードも飛躍的に上がることでしょう。
家電や自動車のような身近な製品だけではなく、ガスや電気などに関連するインフラのすべてがデータを受け取り、分析・発信できるようになるかもしれません。
道路のようなインフラ設備を例にとっても、センサーの強化による交通事故の防止や渋滞の緩和など、IoTが有効だと考えられる場面は多くあります。自動車にIoTの技術を搭載することで、スピード違反の防止なども可能かもしれません。
人間の身につけるウェアラブル端末と連携し、運転者の脈拍や呼吸などの情報を読み取り、安全運転の補助をするような仕組みも考えられます。
モノだけではないIoTの活用方法
IoTの対象となるのは、モノやヒトだけでなく、自然現象にまで広げることができます。地滑りや地震の情報をうまく感知できれば、さまざまな防災手段を講じられるでしょう。自然災害そのものを止められなくても、情報を効率的に伝達することで被害を最小限に抑えることができるのです。
IoTは私たちの住む世界にあるすべてのものに応用できると言っても過言ではありません。アイデア次第で、生活を便利にする多くのサービスが展開されるようになることでしょう。
IoTによるスマートホーム化でお困りではないですか?
各種デバイスは今後も高性能化し、安価になっていくでしょうし、データを分析する人工知能の精度も上がっていくでしょう。モバイル端末を経由したネットワーク環境の充実や利用料金の低下なども、IoTを後押しする要因になるはずです。
広く普及しているスマートフォンなどと連携することで、消費者に身近で新しい体験をもたらす可能性を秘めたIoTの技術。近い未来には、「こんなことができれば」と思っていることの多くが、現実のものになっているかもしれません。
PCホスピタルはIOTによるスマートホーム化「HEMS」の初期設定や使用方法のサポートに対応しています。ご希望の際はぜひご相談ください。
濱﨑 慎一(日本PCサービス株式会社 常務取締役 兼 NPO法人 IT整備士協会 理事)
2010年8月、日本PCサービス株式会社に入社。パソコン修理などデジタルトラブルを5年で4500件以上解決。その後、サポート人材育成など、事業責任者として、個人向けデジタルトラブル解決に8年半携わる。2019年より同社にて、法人向けサポートの取締役に就任。また特定非営利活動法人 IT整備士協会の理事として業界活性化のため正しいデジタル知識の普及、スマートフォンなどの新しい整備士資格の構築に携わる。
保有資格 パソコン整備士検定 取得